「法人営業ってどんな仕事?」「個人営業とどう違うの?」「業界ごとの違いはある?」そんな疑問を抱える方に向けて、本記事では法人営業の基礎知識から、具体的な仕事内容、求められるスキル、さらには業界ごとの特徴まで詳しく解説します。
営業職未経験の方はもちろん、キャリアチェンジを考えている方にも役立つ情報をまとめました。
自分に合った働き方や将来のキャリアパスのヒントとして、ぜひ参考にしてください。
法人営業とは?

法人営業とは、法人や企業向けに商品やサービスを販売する仕事です。
個人営業と比べて、法人営業では商談や金額のスケールが大きく、契約に至るまでに複数回の打ち合わせや提案を重ねるケースも多くなります。
また、法人営業で扱う商材は、大きく分けて「有形商材」と「無形商材」に分けられます。
- 有形商材:サーバーや機械、日用品、食品など、形があって目に見える商品
- 無形商材:ソフトウェアやクラウドサービス、人材サービス、金融商品など、形がなく、サービス性の高いもの
これらの商材の違いによって、営業スタイルや提案の方法も大きく異なる点が法人営業の特徴です。
活躍のフィールドも幅広く、IT・広告・製造業・物流・金融など、あらゆる業界で法人営業のニーズが存在しているところも法人営業の大きな魅力といえるでしょう。
法人営業と個人営業の違い
営業職でよく比較される法人営業と個人営業ですが、両者には、商談の進め方や成果までのプロセスなどに大きな違いがあります。
法人営業で企業向けに業務用車両を販売する場合と、個人営業で自動車ディーラーで個人に車を販売する場合を例に、具体的な違いを以下にまとめました。
【イメージ例】

法人営業は「企業の課題を解決すること」が主な目的であり、顧客自身が問題や課題を明確化できていない場合も多いため、それらを見つけ出し提案する力が求められます。
一方、個人営業は「顧客自身が必要としているものがはっきりしている状態」であることが多く、顧客のニーズに的確に応える力が重視されます。
このように、法人営業と個人営業には異なる点が多くあり、それぞれに応じたスキルや戦略を理解することが重要です。
項目 | 法人営業(BtoB) | 個人営業(BtoC) |
対象 | 法人(企業・団体) | 一般消費者 |
商談規模 | 数百万円~数億万円 | 数万円~数百万円 |
商談期間 | 長期(数ヶ月~数年) | 短期(即日~数日) |
提案内容 | 課題を解決するために、複数部門と連携し提案 | 単品商品やサービスの提案が中心 |
決裁プロセス | 稟議や決裁者の承認が必要 | 本人の意思決定で完結することが多い |
契約継続性 | 中長期の取引が多く、リピート性が高い | 単発契約になりやすい |
必要なスキル | 論理的思考力、調整力、提案力 | コミュニケーション力、共感力、クロージング力 |
法人営業では、提案内容が企業全体に関わることも多く、社内稟議や決裁者の承認が必要になるため、契約までに時間がかかる傾向があります。
一方、個人営業では、「車を買い替えたい」など、顧客のニーズがすでに明確なケースが多いため、比較的短期間で契約が成立しやすいのが特徴です。
法人営業の平均年収

「求人ジャーナルネット給与サーチ」によると、営業職全体の平均年収は359.5万円程度とされています。
ただし、この金額はあくまで一般的な目安であり、ここにインセンティブや各種手当が追加され、さらに以下の要素によっても変動します。
- 経験年数・スキル:営業経験が浅い若手社員は年収400万円前後が多く、5年以上の実務経験やマネジメント経験がある中堅〜ベテラン層では、年収600〜800万円に達するケースも珍しくありません。
- 業界の違い:同じ法人営業でも、IT業界や金融業界など高単価商材を扱う分野は年収が高くなる傾向があります。
- 企業規模:大手企業や外資系企業では、給与水準やインセンティブが高めに設定されていることが多く、1,000万円以上を狙えるケースもあります。
- 手当の有無:営業手当・通勤手当・住宅手当などが支給されるかどうかも、年収実感に大きく影響します。
年収アップを目指すのであれば、これまでの経験を活かせる分野への転職や、資格の取得によって専門性を高めることが効果的です。
法人営業の主な業務内容

法人営業の仕事は、単に「商品を売る」だけではなく、企業課題のヒアリング、課題解決に向けた提案、関係構築、契約・納品・フォローアップ業務など多岐にわたります。
以下に、外勤メインの法人営業の1日のタイムスケジュール例をまとめました。
【法人営業のタイムスケジュール例】
時間帯 | 業務内容 |
9:00〜10:00 | 出社・メールチェック・スケジュール確認 |
10:00〜12:00 | 顧客訪問①(既存顧客との打ち合わせ) |
12:00〜13:00 | 昼食 |
13:00〜15:00 | 顧客訪問②(新規開拓先へ提案) |
15:00〜16:00 | 移動・報告書作成 |
16:00〜17:30 | 社内会議・見積書作成 |
17:30〜18:00 | 日報作成・翌日の準備 |
法人営業では1回の打ち合わせが数時間に及ぶこともあるため、1日の顧客訪問数は2~3社にとどめていることが多いでしょう。
顧客訪問後は社内に戻り、報告書や日報の作成、見積もり、資料作成などの事務作業もあるため、効率的に業務を進める必要があります。
法人営業に向いている人の特徴

法人営業は、長期的にわたり取引ができるよう、企業同士の信頼関係を築き上げていかなくてはなりません。
そのため、単に営業成績だけではなく、人間性や行動が成果に直結することも法人営業の特徴です。
ここでは、法人営業に向いている人の代表的な特徴を3つ紹介します。
相手の立場に立って物事を考えられる人
法人営業では、相手の立場に立って物事を考えられる力が必要です。
単に自社の商品やサービスを売り込むだけでは成果につながりません。
そのため、相手企業の課題やニーズを汲み取り、それに合った提案を行う“課題解決型の営業”が求められます。
たとえば、ITシステムの導入を提案する際に、相手の業界特有の業務フローや、導入後の運用負荷を考慮しないまま話を進めてしまうと、「こんな話しは聞いていない」といったクレームに繋がることもあり、信頼を失ってしまいます。
逆に、相手の立場や現場の課題について親身に聞き、理解しようとする姿勢があれば、「この人から買いたい」と思ってもらえるようになるでしょう。
法人営業では“売る力”よりも“聞く力・共感力”が活かされる場面が非常に多いのです。
粘り強い人
法人営業では、1回の商談で契約が決まることはごくまれです。
数か月、長ければ数年の期間をかけて関係を構築し、タイミングを見て提案を行う必要があるため、成果がすぐに表れないこともあるでしょう。
たとえば、最初の提案で断られても、その後も定期的に訪問を重ね、担当者との信頼関係を築くことで、数か月後に「他社との契約が切れるので、あらためて話を聞きたい」と言われることもあります。
一度の失敗で諦めず、相手の状況を見ながら根気強くアプローチを続けられる人は、法人営業で長く活躍できる傾向にあります。
スケジュール管理能力がある人
法人営業ではスケジュール管理能力の高い「段取り上手」な人が成果を出しやすい傾向にあります。
法人営業の仕事は、複数のクライアントを同時に担当し、商談・社内調整・資料作成・契約・納品など、業務内容は多岐にわたります。
スケジュールが乱れると、信頼損失につながる可能性もあるため注意が必要です。
常に各顧客の進捗状況を確認し、最適なタイミングでフォローしながら、提案資料の準備やトラブル対応などを平行して行う必要があります。
法人営業の主な営業手法

法人営業では、大きく分けて自発的に営業を行う「アウトバウンドセールス」と、顧客から資料請求や問い合わせなどのアクション受けて対応する「インバウンドセールス」の2つの営業スタイルがあります。
ここでは、それぞれの代表的なアプローチ手法についてご紹介します。
アウトバウンドセールス
アウトバウンドセールスとは、営業担当者が自らアクションを起こして顧客に接触し、アポイントや商談につなげていく営業スタイルで、新規顧客の開拓によく用いられる営業手法です。
訪問営業
訪問営業は、企業のオフィスや担当者のもとに直接足を運んで営業を行う手法です。
訪問営業にはいくつかの方法があります。
- 飛び込み営業:訪問営業の代表的な手法の一つで、事前にアポイントを取らずに企業を訪問し、担当者との接触を試みる営業スタイルです。相手の警戒心を和らげるためには、第一印象や話し方に工夫が必要です。また、断られることも多いため、粘り強さと柔軟な対応力が求められます。新規開拓の場面では、相手の立場や状況を尊重しながらも、必要とされるタイミングを逃さず提案できるよう、「しつこくしすぎず、諦めない姿勢」が重要です。
- ルート営業:既存の顧客を定期的に訪問し、関係性を維持・強化していく営業スタイルです。信頼関係を築くことで、顧客満足度の向上や新たなニーズの発見、追加提案につながります。定期的な接触を通じて、顧客の変化や課題に迅速に対応できることも強みです。
紹介営業
紹介営業とは、既存の顧客や取引先、関係者から新たな見込み顧客を紹介してもらい、営業活動につなげる手法です。
紹介営業を成功させるためには、紹介してもらうための関係構築が不可欠です。
日頃から丁寧な対応を心がけ、既存顧客に満足してもらうことで、自然と紹介の機会が生まれやすくなります。
また、紹介者の信用を損なわないよう、紹介先には誠実かつ丁寧な対応を心がけることも大切です。営業としての信頼が広がることで、次の紹介へとつながっていく好循環が生まれます。
テレアポ
テレアポ(テレフォンアポイント)は、電話で企業にアプローチし、商談や訪問のアポイントを獲得する営業手法です。短時間で多くの企業に接触できる点が特徴です。
しかし、顔が見えないことから警戒心が強くなる人も多く、相手の時間を奪う行為でもあるため、丁寧な話し方や相手への配慮が求められます。
顧客との会話内容や流れを事前に決めておいたトークスクリプトの準備や質問に対する回答など、徹底した事前準備が成果に繋がります。
メール営業
メール営業は、企業に対して商品・サービスの案内や提案書をメールで送付する営業手法です。
相手の都合の良いタイミングで読んでもらえる点が利点ですが、未読のままになってしまう可能性も高いため、件名や導入文で関心を引く工夫が必要です。
インバウンドセールス
インバウンドセールスとは、顧客からの問い合わせや興味・関心を起点として始まる営業手法のことです。
反響営業やプル型営業とも呼ばれ、セミナーやSNS、ウェビナーなどで情報を発信し、見込み顧客の興味や関心を引きだすことで自発的な問い合わせを促し、成約につなげていきます。
特に昨今ではデジタル化の進化により、企業の主力営業手段として注目されています。
セミナーやイベントの開催
法人向けセミナーや展示会などを通じて、見込み客を集める営業方法です。
ノウハウ提供や新製品の発表を通じて、「教育→信頼→提案」の流れを作ります。
オンラインセミナー(ウェビナー)なども含め、参加者の関心度を測りながらフォロー営業へとつなげることが可能です。
コンテンツセールス
業界資料や製品紹介資料などを用いて、見込み客と接点を持つ手法です。
相手の課題意識に沿った内容であれば、営業色を感じさせずに関係を築くことができます。
マーケティングと営業の中間領域を担う役割でもあり、質の高い顧客を獲得できることもあるでしょう。
SNSマーケティング
SNS広告や自社アカウントを通じて、認知を高め、問い合わせに誘導させる営業手法です。
企業間の取引であっても、SNSを駆使した情報発信により顧客の関心を獲得し、自然な営業導線を作ることが可能です。
特に、若手経営者や新興企業との接点を持ちやすい点が強みです。
プレスリリース営業
自社の製品・サービスのリリース情報をメディアに配信することで、報道や業界内での話題化を図る営業アプローチです。
メディア掲載により企業認知が一気に拡大し、「問い合わせが来る営業環境」を作ることができます。
プレスリリース営業では、新技術や社会性の高い製品であれば、広報的な役割も果たし、大きな反響を得られることもあります。
法人営業に必要なスキル

法人営業は、ただ商品やサービスを提案すれば良いわけではありません。
顧客企業の課題やニーズを深く理解し、信頼関係を築いたうえで、最適な提案を行うことが求められます。
そのためには、複数のスキルをバランスよく身につけておくことが重要です。
ここでは、法人営業に必要とされる代表的なスキルを紹介します。
コミュニケーション力
コミュニケーション力は、法人営業において重要なスキルの一つです。
顧客との商談や社内調整、上司への報告など、あらゆる場面で必要とされます。
特に法人営業では、取引先の担当者や決裁者と信頼関係を築くことが成功の鍵になります。
言葉遣いや表情、聞き手に回る姿勢など、相手に「話しやすい」「また会いたい」と思ってもらえる態度が長期的な契約につながることも多いです。
傾聴力
法人営業では相手の話を「ただ聞く」のではなく、「顧客のニーズを汲み取る力」が必要です。
自社の話を一方的にするのではなく、顧客の立場に立って要望や課題を聞き出す傾聴力が求められます。
特に初対面の商談やヒアリングでは、相手の話に耳を傾けることで「この人なら相談できそう」と感じてもらうことが信頼構築の第一歩になります。
提案力
法人営業では、顧客のニーズや課題を踏まえ、解決に導くための「提案力」が求められます。
提案力とは、顧客のニーズや課題に対して、自社の製品・サービスをどのように結び付け、メリットとして提示できるかを考える力です。
たとえば、「コスト削減」「業務効率化」「業績向上」など、相手が本当に求めている成果を実現するために、製品の特徴だけでなく活用方法や導入後のイメージまで提案に盛り込むことが重要です。
情報収集力
法人営業では、訪問前の情報収集がその後の商談の成否を分けることもあります。
相手企業の業界動向、直近のニュース、経営課題などをあらかじめ把握しておけば会話の質がより高いものとなり、信頼を得やすくなるでしょう。
また、「御社の状況をよく理解しています」という姿勢は信頼感につながり、「自社のためにここまで準備してくれた」と高く評価されやすくなります。
日頃から新聞や業界紙、企業のIR情報などに目を通し、情報感度を高めておくと営業活動がスムーズになります。
法人営業のやりがい

法人営業は、成果が数字として明確に表れる一方で、顧客との信頼関係を築く人間力も重要な要素です。
決して楽な仕事ではありませんが、顧客との距離が近い分、やりがいを感じられる場面も多くあります。
ここでは、法人営業ならではのやりがいについて紹介します。
さまざまな業界の人と関われる
法人営業は、多種多様な業界の企業と関わる機会があります。
取引先によっては製造業、IT業界、教育機関、医療法人など業界が大きく異なるため、業種ごとのビジネスモデルや課題、業界ならではのルールを学べることも多く、視野が自然と広がります。
「営業先で入手した情報が別の顧客への提案に役立った」といったケースもあり、さまざまな業界と関わることで知見を得ながら成長できる環境が多いでしょう。
規模の大きい取引に携われる
法人営業は、企業間での取引となるため、数百万円から数億万円単位といった大きな商談を担当することもあります。
こうしたスケールの大きな取引に自分が関わり、成果を出せたときの達成感は、法人営業ならではの醍醐味といえます。
特にプロジェクト単位での導入や長期契約を結ぶ場面ではプレッシャーも伴いますが、その分、「自分が会社の成長に貢献できた」という充実感を感じられることでしょう。
経営者との人脈を形成できる
法人営業は、決裁権を持つ役職者や経営者層と直接話す機会が多いという特徴があります。
商談を通じてビジネスに関する高い視点や考え方に触れることができ、自身の考え方や視野も自然と引き上げられていきます。
また、良好な関係が築ければ、経営者とのつながりが人脈となり、次の営業機会や今後のキャリアにも役立つことがあります。
顧客からの紹介で取引先が増えることも
法人営業では、一度信頼を得た顧客から「あなたを紹介したい」と声をかけられ、新たな取引先を紹介されるケースがあります。
これは、前述でも説明した「紹介営業」であり、法人営業において顧客と深い信頼関係が築けている証といえるでしょう。
紹介経由の商談は、すでに信頼がある状態でスタートできるため成約率も高く、紹介された側にとっても「信頼されている人からの推薦」という心理的な安心感があるため、話を聞いてもらいやすく、商談がスムーズに進みやすいこともメリットとして挙げられます。
紹介営業は、営業として大きな自信とモチベーションを感じられる瞬間です。
法人営業がきついといわれる理由

法人営業はやりがいのある仕事である一方で、「きつい」「大変そう」といわれることも多くあります。
確かに、成果を出すまでに時間がかかることや、精神的なプレッシャーを感じる場面も少なくありません。
ここでは、法人営業がきついと感じられる主な理由を具体的に解説します。
顧客との信頼関係を構築するのに時間がかかる
法人営業では、一度の提案や訪問で契約が決まるケースは稀です。
企業同士の取引は慎重に進められるため、まずは相手からの信頼を得なくてはなりません。
まずは担当者との関係づくりから始まり、複数回の商談や提案、稟議の承認プロセスを経て、ようやく契約に至るという流れが一般的です。
そのため、短期間で成果を求めようとすると、つまずきやすくなります。
短期的な成功を目指すのではなく、着実に進め、ひとつひとつ誠実に対応することが成功の鍵となるでしょう。
成果がでるまで長期に及ぶ可能性がある
法人営業は、動く金額が大きい分、成果が出るまでに数ヶ月、場合によっては半年から数年かかることもあります。
また、商談相手は1社だけでなく複数の企業から同様の提案を受けていることが多いため、競合と比較されるケースも多く、商談が長期化しやすい傾向にあります。
そのため、自分なりの戦略を持って、焦らず地道に提案活動を続ける忍耐力が必要になります。
ノルマへのプレッシャー
法人営業を含む営業職全般では、営業目標やノルマが設定されているケースが一般的です。
「絶対に達成しなければならない数字」として捉えるとプレッシャーになるかもしれませんが、「自分の成長指標」「評価基準のひとつ」としてポジティブに捉えることも可能です。
また、企業によっては、個人ノルマではなくチーム目標を設けているケースもあります。
ノルマや目標は企業によって異なるため、自分に合った環境を選ぶことが大切です。
新規営業のアポが取りづらい
新規開拓営業では、そもそもアポを取ること自体が難関です。
電話やメールでのアプローチに対し、忙しい企業担当者は応じてくれないケースも多くあります。
そのような中でも成果を上げている法人営業担当者は、以下のような工夫をしています。
・相手企業の課題に寄り添った提案を事前に用意
・これまでの取引件数や導入実績数など数値化した情報を提示
・時間帯を変えてアプローチ
・メール→電話→SNSなど、複数チャネルを使い分け
こういった工夫と継続が、アポの獲得率を高めるカギとなるでしょう。
法人営業が活躍する業界11選

法人営業と一口にいっても、業界ごとに扱う商材や営業スタイル、顧客との関係性には大きな違いがあります。
ここでは、代表的な10業界における法人営業の特徴を紹介します。
IT業界
IT業界の法人営業は、ソフトウェアやクラウドサービス、システム開発といった目に見えない「無形商材」と、サーバーやタブレットなどのハードウェアに代表される目に見える「有形商材」の両方を扱うことが多く、顧客の課題を的確に捉えた提案力が求められます。
エンジニアと連携しながら営業活動を進める場面も多いため、一定の技術の理解やIT知識が必要です。
ITに関する知識を証明するために、基本情報技術者やITストラテジストなどの資格を取得すると、企業によっては資格手当が支給される場合もあり、年収アップにつながるでしょう。
食品業界
食品業界の法人営業は、自社製品をスーパーマーケットや飲食チェーン、コンビニエンスストアなどの小売店に対して提案・販売を行います。
自社ブランドの認知度や商品価値を高めるために、情報収集や市場調査を行い、それらのデータをもとに取引先に対して自社製品の提案をします。
また、店舗視察を通して売場の構成や客層、売れ筋商品の傾向を把握し、販売戦略の精度を高めるための情報収集も重要な業務です。
新店舗のオープン時には、顧客企業とともに商品陳列や売場づくりを行うこともあり、現場対応力も求められます。食品業界は商品の入れ替わりが早く、トレンドや季節商品への対応も重要です。
そのため、売れ筋を見極める「目利き力」や、適切な在庫管理の視点を持つことが営業職としての評価に直結します。
金融業界
金融業界とは、銀行や証券会社、保険会社、資産運用会社など、お金に関する多様なサービスを提供する業界の総称です。
この業界における法人営業は、自社で取り扱っている法人向けの融資、保険、投資商品、決済サービスなどの金融商品を企業や団体に対して提案します。
特に、企業の資金調達やリスク管理、資産運用のニーズに応じた商品選定や提案が主な業務となります。
営業活動においては、企業の財務状況や経営計画に深く踏み込んで提案する場面も多く、ヒアリング力と金融知識が求められます。
また、金融業界は特にコンプライアンスなどの法令遵守の重要性が高いため、法規制や内部ルールを理解し、誠実な対応を取る姿勢も欠かせません。
広告業界
広告業界の法人営業は、クライアント企業の課題に応じた広告施策を企画・提案を行うのが主な仕事です。
広告業界は締め切りや納期が決まっており、期日までに確実に納品しなくてはなりません。
そのため、スケジュール管理能力や進行管理スキルが非常に重要です。
たとえば、インターネット広告においては、顧客が広告の運用を開始する際に、内容の打ち合わせから入稿、予算設定、運用管理、効果分析、レポート報告までを一貫して対応する必要があります。
複数のクライアントを同時に対応する場面も多いため、マルチタスク能力やスピード感が求められます。
人材派遣業界
人材派遣業界の法人営業は、人手不足の企業に対して、ニーズに合った人材の派遣や紹介を行います。
企業との信頼関係構築に加え、派遣スタッフとの関係性も非常に重要です。
そのため、相手の立場を理解するバランス感覚や、高いコミュニケーション力、人間関係構築力が求められます。
また、派遣スタッフが職場にうまく馴染んでいるか、業務に支障がないかなどのアフターフォローも法人営業の重要な仕事のひとつです。
このようなきめ細かなフォローが、長期契約やリピート受注へとつながることも少なくありません。
加えて、営業活動の中では、企業の採用ニーズや就業条件と、派遣スタッフの希望条件をすり合わせる必要があるため、調整力や交渉力が問われます。
化学業界
化学業界の営業は、原料・素材・工業製品などを企業間で取引するBtoBといった法人間取引が中心で、各化学メーカーが扱う製品を製造業などの企業に対して提案・販売します。
この業界には以下のような業種が含まれます。
- 石油やガスなどのエネルギー系商材
- ゴムや繊維などの化学製品
- インクや塗料などの顔料系製品
- 洗剤やシャンプーなどの生活消費材の原料
化学業界の法人営業では、既存顧客を中心としたルート営業が多く、長期的な取引関係が求められる傾向にあります。
取り扱う製品に専門的な知識が必要なため、営業担当者は理系出身者が多く、技術部門との連携も必要です。
また、他業界と比較してノルマが厳しすぎない点や、土日休みの企業が多い点も特徴で、安定した職場環境の中で長く働ける業界として人気があります。
小売業界
小売業界の法人営業は、仕入れ先との商談や新商品の導入、販促施策の提案などを主な業務としています。
そもそも小売業界とは、百貨店、スーパーマーケット、コンビニエンスストア、専門店などを指し、メーカーが製造した商品を最終的に消費者へ販売する役割を担う業態です。
法人営業の現場では「外商営業」と呼ばれることもあり、企業や取引先に直接出向き、自社が取り扱う商品やサービスの提案・販売を行います。
営業担当者には、顧客のニーズを的確に把握するヒアリング力や、消費者の動向やトレンドをいち早く察知するマーケティング的な視点が求められます。
季節商品やキャンペーン商品など、時期によって売れ筋が大きく変わることがあるため、タイミングを逃さず提案できる柔軟性とスピード感が重要です。
旅行業界
旅行業界の法人営業は、企業の出張手配や社員旅行、学校の修学旅行など、団体旅行に関する企画・提案を行う仕事です。
企業や団体のニーズを丁寧にヒアリングし、目的、スケジュール、予算に応じて最適な旅行プランを構築する力が求められます。
取引先の満足度を高めるためには、移動手段、宿泊施設、食事、観光先などの手配をバランスよく調整する調整力と提案力が必要です。
また、団体旅行では、宿泊日や乗車時間、人数の管理といった細かな手配ミスが大きなトラブルにつながる可能性があるため、慎重さと高い計画力が求められます。
法人営業の中には、営業活動だけでなく添乗業務を兼ねるケースもあります。実際に現地へ同行して対応することもあり、各地を訪れる機会が多い点は、旅行業界の営業ならではの魅力といえるでしょう。
不動産業界
不動産業界の法人営業は、オフィスビル、商業施設、工場、物流倉庫といった事業用不動産の賃貸・売買提案を中心に行う仕事です。
企業が抱える「事業所の移転」「拠点の新設」「老朽化施設の売却」などの課題に対して、物件の紹介や契約条件の交渉などを通じ、解決に導きます。
また、建物を建てるための土地を取得する用地仕入れ業務もあり、売却が見込まれる土地の情報収集、所有者との交渉、不動産会社や仲介業者との連携も重要な業務の一つです。
法人営業においては、契約金額が高額になるケースが多く、契約成立までに時間がかかることも少なくありません。そのため、土地所有者や関係者との信頼関係の構築が成功のカギとなります。
加えて、宅地建物取引士(宅建)などの資格を取得しておくと、業務の幅が広がり、物件の契約や重要事項説明などの専門的な手続きも対応できるようになるため、キャリアアップにつながります。
商社業界
商社業界の法人営業は、国内外の企業や地域の間に立ち、商品の輸出入や流通を通じてビジネスをサポートする仕事です。
取り扱う商材は、食品や繊維、機械、エネルギー、化学製品など多岐にわたり、業界や地域によって必要とされるものが大きく異なります。
営業担当者は、どこにどんな商品を売りたい企業がいるか、どこで買いたい企業がいるか、需要の動向はどうかといった情報を幅広く調査・分析します。
そのうえで、価格や数量などの取引条件を調整し、契約を締結して納品・決済までの流れを管理します。
取引先によっては、生産から流通、販売までトータルで関与することもあります。
グローバルな視点が求められる商社では、英語をはじめとした語学力や、貿易実務、関税・法律に関する知識などが必要です。
ビジネススケールが大きく、海外出張や駐在の機会もあるため、国際的な経験を積みたい方にとってはやりがいのある業界です。
また、為替変動や国際情勢の変化がビジネスに直結するため、情報収集力と柔軟な対応力も重要とされます。
法人営業へ転職する際のよくある質問

法人営業への転職を検討する中で、多くの人が抱く疑問について解説します。
未経験からの挑戦や、営業職ならではのイメージに不安を感じている方も多いですが、意外と誤解している部分も多いものです。
ここでは、法人営業に転職する際によくある質問についてまとめました。
女性で法人営業は難しいですか?

女性で法人営業は難しいですか?

法人営業は、性別を問わず活躍できる職種です。
実際に、多くの女性営業職が第一線で成果を上げており、女性ならではのきめ細やかな対応やヒアリング力、共感力を強みとして評価されるケースもあります。
また、近年では女性活躍推進の流れから、産休・育休制度が整った企業も増えており、長く働き続けることも可能です。
性別よりも、相手の課題に寄り添い、信頼を築けるかが重要視されます。
コミュニケーション力に自信がありません。営業職はあきらめた方がいいでしょうか?

コミュニケーション力に自信がありません。営業職はあきらめた方がいいでしょうか?

営業職においてコミュニケーション力は確かに大切な要素です。
しかし、それは話がうまいことではなく、相手の話を聞き、適切に伝える力がより重要となります。
そしてコミュニケーション力は、経験やトレーニングで伸ばせるスキルです。
「現時点で得意かどうか」よりも、学ぶ意欲や改善しようとする姿勢の方がはるかに大切です。
コミュニケーション力を向上させるために、以下のような取り組みを通じてスキルアップを図ると良いでしょう。
- 異業種交流会への参加:会話の練習になり、視野も広がります。
- ロールプレイング研修:転職エージェントなどが実施する営業ロープレ研修。
- 読書や動画で学ぶ:営業術やコミュニケーションに関する書籍・講座も多数あります。
営業職はノルマがきついイメージがあるのですが、実際はどうですか?

営業職はノルマがきついイメージがあるのですが、実際はどうですか?

たしかに営業職には「ノルマ(目標)」が設定されることが多く、これに対してプレッシャーを感じる人も少なくありません。
ただし、そのノルマどのように運用されているかは、企業によって異なります。
・ノルマの達成度がボーナスに影響する企業
・チーム全体で目標を追う企業
・達成に至らなくてもプロセス評価を重視する企業
・未達成に対してペナルティを課す企業
特に、ノルマ未達成を理由にペナルティを課すことは、労働基準法に抵触する可能性があります。
そのため、このような基準を設ける企業は避けましょう。
たとえば、面接時において、以下のような質問をすることでノルマに対する企業の方針を知ることができます。
- 「営業目標はどのように設定されていますか?」
- 「個人とチームの評価バランスは?」
- 「未達成時の評価はどうなりますか?」
また、転職口コミサイトでの社員の声も参考にするのもいいでしょう。
ノルマに対する企業の考え方は千差万別なので、転職後のミスマッチを防ぐためにも自分に合った企業を見極めましょう。
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法人営業への転職を成功させるには、業界や商材の特性を理解し、企業ごとの営業スタイルに合ったスキルや経験をアピールすることが重要です。
信頼関係の構築力や提案力、調整力などの営業基礎力が求められるため、自己分析と企業研究を丁寧に行いましょう。
自分の強みを活かせる業界や営業手法を見極めることで、転職後の活躍にもつながります。
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